富士山自転車旅行 その1 -1日目-
<1999.5.9-10 Sat-Sun>


何がきっかけだったかは定かではないが、富士山へ自転車で行くことを思い立った。
もしかしたら、最近書店で偶然にも立ち読みした、のぐちやすお著の自転車野郎養成講座だったかもしれない。
それによると、1日でだいたい100kmは走れるらしいので、それをもとに考えたところ、自宅から100km圏内の有名な場所…そう、富士山が思い浮かんだ。

この計画は、4月の下旬辺りに現実味を帯びてきた。連休中は予定が入っていたので、その後の土日で行くことにした。

連休中に、週間天気予報で天気が判明する。…晴れだ。この時点で旅行計画を立ち上げ、ガイドブックであらかじめ調べておいた富士吉田シティーホテルに電話で予約を取った。

初めての宿泊自転車旅行のため、前日は持ち物や自転車整備も含めて、入念な準備を行った。

自転車にキャリアはついておらず、荷物は全てリュックに入れて背負うことに。今回の資金は30000円。1泊にしては潤沢すぎる資金だが、初めてということもあり、かなり余裕をもって用意した。


1999年5月9日(土) 1日目  神奈川県藤沢市〜山梨県富士吉田市


さて、当日は4時に起床。当日に準備しなければいけないものを準備し、食事を済ませて出発。
何事も初めてだったため物珍しさもあり、今回はビデオを持っていき、各所各所で自分や周りの様子を撮影した。ちょうどそんなテレビ番組をやっていたので、それに影響されてのことだろう。

4:40に出発。国道1号線をひた走り、国府津まで行く。途中、平塚、大磯、二宮など、要所要所でビデオ撮影をした。このときまだ薄暗かったので、堂々と独り言を言いながら撮影できたのだが、さすがに国府津辺りまで来ると、時間が6:30ということもあり、なかなかためらわれる。…別にアヤシイことをしているわけではないのだが。

国府津からは県道を北に向けてはしり、新松田へ向かう。新松田到着は7:05。家からわずか2時間半で到着。


           
            -下曽我から、目的地である富士山を望む-        -国道246号線 現在この付近はバイパスが通っている-



ここからは国道246号線に沿って静岡県へ。途中、歩道もない狭い道を大型トラックがすれすれを通り過ぎるような道を通り、静岡と神奈川の県境までやってきた。
そこで休憩とした。ちょうど、携帯も東海デジタルホンとのローミング表示を示した。いよいよ静岡県へ。

そこから少し進むと、自転車通行不可となるので、わき道へそれ、県道を走っていく。

この辺りで空腹を感じてきたので、ちょうど目の前に現れたセブンイレブン駿東小山店で軽く腹ごしらえをした。
店の外で、自転車のサドルに置いて食べていたのだが、店員さんがやってきて、
「そこに座っていいわよ」と店の脇の段差を指差して言った。
「学生さんなんかはみんなそこに座って食べているのよ」
といって、教えてくれた。よほど窮屈そうに見えたのだろうか。でも、そこに何気ない温かみを感じた。

食べ終わると、再び西を目指して走り出す。
ところが、この先はずっと上りだということを、私は読図の段階で、完全に見落としていたのであった。…富士山に向けて走っているのだから、相当の上りであることすら考えていなかったのだ。

しばらくとろとろと走り、再び246号線へ出たのは、9:30のことであった。8kmの道のりを1時間かけて走っていたのである(あくまで計算上で、休憩時間も含めているが)。



-吉久保付近で富士山を正面に見る-



この先も容赦ない上り坂。ゴルフ場の間を一直線に貫通する道をただひたすら走った。途中、何度も休憩を挟みながらでも、少しずつ走っていく。
このときすでに足にはかなりの疲労を感じており、日陰の側溝に足を投げ出して何度も休んだ。

一旦御殿場市に入り、すぐに小山町へ入る。しばらく走ると、急なヘアピンカーブとともに、恐ろしい急坂が待ち受けていた。そこを乗り越えると、須走へ。

そこでローソン小山町須走店が見えてきたので、そこで休憩をしつつ、水を補給した。この時時間は11時近くであった。

さぁ、ここから初めての峠越え、籠坂峠へチャレンジ。その途中、富士山がよく見えるところで、夫婦らしい方に写真を撮ってもらった。

峠越えは、ペースを極端に落としてゆっくり走るのがベストだという。私もかなりのスローペースで、じっくり上っていった。途中、バイクの集団を何度も見かけた。

途中、今まで走ってきた道を見渡せる場所があり、その景色に感動しつつ、自力でここまで来たんだという喜びに浸った。そして、何度も何度も休憩をしながら、峠を上りきった。12:10のことである。高度は1104mである。ここから富士吉田まではずっと下りだということも、読図の甘さから、知らずに走ることになるのである。



-峠までもう少し  県境-



富士吉田を過ぎて、河口湖インター付近まで突っ走る。山梨県立富士ビジターセンターで少し休憩を取り、本日のメインイベント、富士スバルラインの走行に備える。

スバルラインでは、緩やかな勾配3%くらいの坂を、スバルランドまで走っていく。スバルランドでチョコレートを購入し、さらに上っていったところに、ゲートが見えた。

自転車も通行料がかかるので、320円を払い、いよいよ本格的な上り坂に入る。この時点で14:15のことであった。計算上は5合目まで行けるはず…。

ここから、延々と勾配6〜9%の急な坂が続く。朝の4時からずっと走り、1000m以上の高低差を走ってきた私の足はさすがに限界を感じてきた。休憩をとってももはや焼け石に水で、まったくと言っていいほど意味をなさなかった。

15:20にようやく1合目の看板が見えてきた。ここで記念撮影をして、休憩をとり、再び上を目指す。もうここまでくればひたすら走るしかない。途中、すれ違うドライバーの物珍しそうなまなざしを受けながら、とにかく走っていく。



-ようやく1合目へ到着-


2合目についたのが、16:15のことであった。さすがにもう限界だった。気力だけで走っているという状態だった。計画の無謀さにこの時になって気づく。次回は2泊プランで行こうと、ここまできてようやく悟った。



-2合目へ到着 ヘトヘトです-



大粒の雨に一時降られたが、すぐに止んでくれてよかった。このまま降り続いたら、なすすべなく濡れるだけである。

2合目で引き返そうかと思ったが、ガイドブックには、2合目駐車場は最初の絶景ポイントを書いてあったので、その駐車場までは行ってみることにした。
が、途中それらしい空き地があったが、木に遮られていて、景色はまったく見えなかった。仕方なく、その空き地が駐車場ではなかったのだと判断し、もう少し進んでみることにした。

すると、いつの間にか樹海台駐車場についてしまった。ここからだと、もうすぐ3合目だが、足を伸ばして伸びをしようものなら、たちまち筋肉がつってしまうような状態だった。
ふと携帯を覗き込むと、マップでは圏外のはずなのだが、電波は届いていた。そこで、友人に現況を連絡した。そして、この先は諦め、ホテルへ向かうことにした。この時すでに16:45であった。



-樹海台駐車場にて 今回はここで引き返すことに-



下りは爽快であった。今まで上ってきた分を、勢いよく下れるのだから。最高時速64km/hにまで達し、今まで上ってきた道を一瞬で駆け抜けた。ほんのわずかな時間であったが、この瞬間も、自転車の醍醐味であるだろう。

ビジターセンター付近でお土産を買い、富士吉田駅近くの、富士吉田シティーホテルへ向かう。

ホテルはすぐに見つかった。自転車を裏に止め、チェックイン。宿泊代金と朝食代を支払い、客室へ。
荷物を置いた後、近くのイトーヨーカドーで明日の食料と水を買い込んだ。店を出た時、ちょうど山肌に太陽が沈もうとしていた。

ホテルに戻り、一息つくころには、もう時間は19:00を回っていた。後はゆっくり過ごす。

足の疲れは痛みに変わっていた。しゃがんだ体勢をとった時が一番つらく、刺す様な痛みを感じることもあった。とりあえず湿布を貼ってみて様子をみることにした。

翌日は、籠坂峠を越えてしまえば、松田までは下りなのでかなり楽だろう。

23時頃、明日に備えて早めに就寝。


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